うつ病

(1)先進諸国で
うつ病の増加が大きな社会問題になっており、日本も例外ではありません。一生のうちに個人がうつ病になる率は、女性の10〜25%、男性の5〜12%といわれています。非常に多い病気ですが、受診する患者さんは少ないといわれます。心の病気に対する偏見も理由のひとつですが、うつ病が疲労や倦怠感・自律神経症状などの身体症状を伴うため、内科や婦人科の病気と思いこんでしまうからだといわれています。うつ病は、悪化すると仕事や学業に支障をきたし、家族関係などに影響する場合も多いといわれます。うつ病になると、不安で憂うつな毎日に苦しみ、頑張れない自分を責め悲観的になります。現在では有効で安全な治療法が開発され、治癒率も高くなっています。まず受診して治療を受けることが必要です。うつ病も早期に治療することが大切です。

(2)うつ病は悪化しない早い段階で受診することが大切です。次のような症状が、2週間以上、毎日のように続いている方は注意してください。

@憂うつで沈んだ気持ちが続く
A何ごとにも興味がわかない、楽しめていたことが楽しめない
B食欲減退や体重減少(増加の場合もある)
C睡眠の障害
D活動性が落ちたり、イライラがつのる
E気力がないと感じたり、疲労感が強い
F自分は価値がないと思ったり、罪の意識を感じる
G思考力や集中力、決断力が落ちたと思う
H生きていたくないと思う


 これらは、アメリカ精神医学会のうつ病の診断基準をもとに作成したものです。特に
@とAの両方が当てはまり、一ヶ月以上続く場合は、高い確率でうつ病と診断されるといわれています。その他、頭痛・肩こり・倦怠感・胃腸障害・発汗や息苦しさ・生理不順・性欲がない等の身体症状もうつ病でよく見られる症状です。

(3)うつ病の受診率は実は圧倒的に内科が高く、次に婦人科であり、心療内科や精神科の受診率はかなり低いといわれています。理由のひとつは、うつ病が、
倦怠感・胃腸症状・頭痛・めまい・体の痛み・動悸・息苦しさ・発汗などの身体症状を伴うことが多いことにもよりますが、もうひとつは体の病気が原因でうつ病・うつ状態が引き起こされることが多いからです。一般科を受診する人の10-20%がうつ状態という報告もあります。多くの体の病気でうつ状態が起こります。糖尿病や甲状腺疾患、パーキンソン病や認知症、心筋梗塞や悪性腫瘍その他の多くの病気がうつ病を合併します。一方悪性腫瘍では、うつ病が免疫機能を低下させるために、うつ病の発見と治療が特に重要であるといわれます。うつ病では免疫力低下により風邪を引きやすくなります。
(4)うつ病は適切な治療により、約80%の方が3ヶ月以内に症状改善を見込めるといわれています。治療法としては、主として抗うつ薬治療と十分な休養が上げられます。最近は副作用の少ない薬が開発され日本でも使われるようになりました。また、認知療法(固有の思考パターンの修正)という治療法も知られてきました。しかし、うつ病は再発や再燃が特徴でもあります。症状改善後少なくとも6ヶ月以上は維持的薬物治療が必要だと考えられています。家庭や職場の理解のあるなしが、治療や復帰に大きな影響を及ぼします。ストレスの多い環境による一時的なうつ病は、環境の改善で早期の回復が見込めることもあります。性格的要因の強いうつ病は、心理療法が必要になることもあります。

           パニック障害

 
突然に不安感やパニック感におそわれ、動悸や息苦しさ、めまいや震えや冷や汗、胸や腹部の不快感や痛み、死や自己制御できない恐怖に襲われる症状パニック発作といいます。パニック障害では、パニック発作が繰り返し起こり、また発作が起こるのではないかという心配(予期不安)が続きます。また、電車や車に乗れない乗物恐怖や外出恐怖のように、日常生活が制限されることもあります(回避行動)。また、これらの症状が、心臓や呼吸器などの身体の病気が原因ではないため、病院でも検査で異常がないといわれ、心療内科の受診が遅れることも少なくありません。パニック障害は、治療が遅れるとうつ病を併発することもあるといわれています。パニック障害は、坑うつ薬や坑不安薬による薬物療法や、行動療法がもちいられます。2〜3ヶ月の治療で症状は軽快しますが、再発防止や回避行動の治療にはさらに時間がかかります       

             
           
神経症性障害

 強迫神経症対人恐怖症などが良く知られています。強迫神経症では、ありえないと思っていても繰り返し浮かんで来て困る観念や衝動があり、これを強迫観念といいます。例えば「愛する家族が事故にあう」「自分が人を殴るのではないか」などです。また、不潔恐怖のように長時間手洗いをやめられなかったり、戸締りや火の元の確認を繰り返して遅刻してしまう強迫行為もあります。
 一方、対人恐怖症では、対人場面で過度の緊張や不安を意識します。他人や自分の視線、体臭や自分の表情や風貌が気になり、対人交流や対人関係が苦手になり避ける人もいます。過剰な自意識が性格特徴にあるといわれます。日本や韓国など儒教文化の影響の強い国に多いという報告もあります。SSRIなどの抗うつ薬や抗不安薬などの薬物療法や行動療法、心理療法による治療が行われます。神経症には、他の恐怖症、不安神経症、抑うつ神経症、心気症、ヒステリーなどがあります。 

        

         心療内科・精神科の治療

 クリニックの一般的治療では、初診時は通常30分〜1時間程度の診察を要します。その中で、診立て(診断や見通し)や治療方針を伝え、必要なアドバイスを行います。(薬物療法)多くのうつ病やパニック障害などの神経症は、薬による治療が有効なため、薬物療法が一般的に行われます。最近では、安全性の高い治療薬の開発が進み、改善度も高まっています。服薬のメリット・デメリットを伝えたうえで、患者さんに選択してもらう場合もあります。服薬の不安の解消も初期には大事な作業となります。
 
再診は通常5分〜20分の診察になります。家庭・職場・学校・対人関係・健康問題などのストレス要因の強い病気については、ストレスの特徴を把握し、対処法・環境改善法・休養などを話し合います。必要な場合には、家族に理解を求め協力してもらうこともあります。学校や職場の協力も重要です。コミュニケーションや認知・思考・行動パターンに特徴があり、病気との関連や影響が疑われる場合には、そのパターンの把握をした上で改善法を考え必要なトレーニングを提案することもあります。
 また、心療内科の治療では、特に
信頼関係の形成が重要です。これには、医師・患者相互の努力が必要となります。医師の仕事だけでなく、患者さんの改善への意志が大切です。
 一般外来以外に、自己の内面の問題を探求していく
心理カウンセリングや精神分析療法を行うこともあります。この治療法は患者さんによって向き不向きがあります。さらに、時間や費用の負担を考慮する必要があります。しかし、患者さんの精神的成長や葛藤解決能力の向上を期待することが出来ます。また、集団力学を利用する集団精神療法を個人療法と並行して行うこともあります。また、家族療法・夫婦療法なども、メンバーの適性や共通の目標の共有を確認した上で行われます。